過活動膀胱とは
尿意が急に起こり我慢できない、トイレに行く間隔が短いなど、夜間の尿の回数が多いなどの症状を認める患者様(症候群)を過活動膀胱と言います。過活動膀胱は、幅広い年代に見られ国内40歳以上の人口の約12.4%に認めたと報告されています。ますが、特に50歳以上の男性に多く見られます。過活動膀胱によって社会生活や仕事を制限せざるを得ないこともあります。過活動膀胱の症状でお悩みの方は、早めの検査と適切な治療やトレーニングなどで症状改善を図ることが可能です。日常生活で尿漏れや頻尿などの症状でお悩みの方は、お気軽に当クリニックを受診されることをお勧めします。また同様の症状でも、別の泌尿器科疾患が原因となっている可能性もありますので、泌尿器科専門医の正確な評価を受けられた方がよいと考えています。
過活動膀胱の症状
- 尿意切迫感:急な尿意が起こり我慢できない
- 昼間の頻尿(8回以上/日)
- 夜中の頻尿(2回以上)・尿意を催してからトイレまで我慢できずに尿漏れしてしまう(切迫性尿失禁)
- 慌ててトイレに駆け込むことがある
- トイレに行っても尿が出にくい、勢いがない
- 一度尿意が気になると我慢できなくなる
など
過活動膀胱の原因
過活動膀胱を引き起こす明確な原因は分かっておりません。ただし、膀胱機能変化(加齢・前立腺肥大症など)や、脳疾患(認知症・パーキンソン病・脳血管障害など)、脊髄疾患(脊髄腫瘍・頚椎症・脊髄損傷・脊柱管狭窄症など)など、様々な要因が関与しているとされています。その他、これらの基礎疾患がなく、原因が分からずに過活動膀胱が起こるケースもあります。
過活動膀胱の検査・診断
問診や尿検査、超音波検査、残尿測定検査を行います。症状の原因となる他の疾患がないか評価し、あれば治療を行います。
他の疾患が除外できれば症状質問票などを用いて症状を評価します。
過活動膀胱症状質問票(OABSS)
排尿に関わる4つの症状についての質問票です。それぞれスコア化されていて、過活動膀胱の診断や重症度を評価します。
尿検査
尿中の赤血球数や白血球数を測定します。尿路感染症や悪性腫瘍などがあれば、そちらの治療を優先します。
残尿測定
排尿直後に超音波検査を下腹部に行います。排尿後の膀胱に尿の残量を調べ、排尿機能を評価します。
過活動膀胱の治し方(治療)は?
自力で治る?
主に、薬物療法と行動療法があります。症状に応じて、これらを組み合わせて治療を検討していきます。
薬物療法
β3受容体作動薬
膀胱のβ3受容体に作用することで膀胱弛緩作用を高めます。これによって、膀胱に溜められる尿量を増やし、尿意切迫感などの苦痛症状を解消していきます。β3受容体作動薬は、抗コリン薬と比較して便秘や口渇などの副作用が起こりにくいとされています。
抗コリン薬
膀胱のムスカリン受容体とアセチルコリンとの結合を阻止し、膀胱の筋肉を緩和します。これによって、尿意切迫感の症状を緩和し、膀胱に十分な尿を溜められるようにします。抗コリン薬は、便秘や口渇などの副作用が起こることがあるため注意が必要です。
行動療法
(自分でできる対処法)
生活習慣の改善
- 体重減少:最も多く効果が報告されている行動療法です。
- 運動量の増加:内臓脂肪減少が効果を示すとの報告があります。
- 禁煙:喫煙が過活動膀胱のリスク因子との報告があります。
- 食事・飲水指導:ビタミンDと低脂肪食が効果を示した報告があります。
- アルコール・カフェイン摂取制限
頻尿を引き起こすカフェインやアルコールの過剰摂取、水分の過剰摂取に気を付けます。また、便秘や肥満は尿漏れを引き起こすため、適度な運動を行います。
膀胱訓練
排尿間隔をできるだけ長く空けられるように、尿意を起こしてもなるべく我慢する訓練です。まずは短時間から開始して、徐々に15分単位で排尿間隔をあけていきます。最終的には、排尿間隔を2~3時間まで空けられるようにしていきます。
骨盤底筋訓練(体操)
膣や肛門を締める訓練によって骨盤底筋を鍛えます。主に、腹圧性尿失禁に有効な体操ですが、骨盤底筋が強くなることで尿道括約筋が鍛えられ、膀胱の過活動症状の改善にも非常に有効です。