尿潜血陽性と尿沈渣陰性
健康診断の尿潜血陽性の結果を受け、血尿の原因精査目的で多くの患者様にご来院いただいております。当クリニックの充実した検査体制を信頼していただいていると考えております。当院で再検査し尿潜血は再度陽性となるものの、尿沈渣で陰性となることがございます。結果をお聞きになった患者様が戸惑われることが少なくない印象です。そこで、『尿潜血陽性』と『尿沈渣陰性』に関して少し解説させていただきます。
尿潜血検査:尿に試験紙を浸して、赤血球の成分であるヘモグロビンの量を試験紙の色調変化で判定する検査法です。
尿沈渣検査:尿沈渣とは、尿を遠心分離して沈殿した物質を顕微鏡で観察し、細胞や結晶などの存在を確認する検査です。「陰性」とは、血液成分(赤血球)が見られないことを意味します。
『尿潜血陽性』で『尿沈渣陰性』の組み合わせが起こる理由には以下の可能性があります。
①尿潜血偽陽性
尿潜血反応(尿定性検査)は比較的簡易的な検査で、場所を選ばず効率的に行えます。しかし、尿中に筋肉の分解産物や一部の化学物質が多く含まれていると赤血球が存在しなくても陽性という結果、すなわち『偽陽性』となります。
- ②一過性の出血
一時的な要因(激しい運動や感染など)により、血液が尿に混入したが、検査時にはすでに出血が収まっている場合。
血尿の精密検査は、高い精度で評価できる尿沈渣を行う環境が必須となります。一般的なクリニックではその環境がないことが多いと思います。当クリニックは尿潜血検査(尿定性検査)に加え、尿中有形成分分析装置(Siemens Healthneers Atellica UAS800)を配置しています。正確に尿中の赤血球を定量することが可能で、迅速に結果を報告できるため患者様をお待たせいたしません。
血尿は腎泌尿器系悪性腫瘍や疾患の重要なサインです。より正確な判断ができるクリニックでの血尿原因精査をお勧めいたします。